はじめに:国産米の「高すぎる主食」化
令和7年、日本の米価はついに5kgあたり4,260円に到達。 かつて「安くて腹持ちがいい」主食だった米は、今や高級食材の一歩手前。 この価格高騰は、消費者の購買行動を根底から揺るがし、輸入米という選択肢が現実味を帯びてきた。
備蓄米の限界──政府の「最後のカード」は効かなかった
農林水産省は令和7年春、備蓄米31万トンを競争入札で放出。 しかし、流通コスト・中間業者のマージン・物流の逼迫が重なり、店頭価格はほぼ変わらず。 消費者の不満は高まり、政府は5月末から随意契約による30万トンの売渡しに踏み切った。
この米は全国一律2,160円/5kgで販売され、スーパーやコンビニに並んだ。 だが、これも一時的な価格抑制策に過ぎず、根本的な解決には至らなかった。
輸入米の台頭──「安くて炊きやすい」が新基準に
価格の安さだけでなく、炊飯の手軽さ・味の許容度・保存性など、輸入米には独自の強みがある。 米国産の長粒米、台湾産の中粒米、ベトナム産のジャスミンライスなどが、用途別に選ばれる時代が到来。
特に若年層では「味にこだわらない」「冷凍やレンチンで済ませたい」というニーズが強く、 輸入米は“合理的な主食”として受け入れられつつある。
関税と国際交渉──「700%の壁」が揺らぐ
米国との交渉では、かつてトランプ大統領が「日本の米関税は700%」と批判。 令和8年に向けて、関税見直しの議論が再燃している。 TPPや日米FTAの枠組みの中で、輸入米の流通量が増える可能性は極めて高い。
この動きは、単なる貿易の話ではなく、日本の農業保護政策の根幹に関わる問題でもある。

消費者心理の変化──「主食=米」の時代は終わる?
炊飯の手間、価格の高さ、味の飽き。 これらが複合的に作用し、若者を中心にパン・麺・オートミール・冷凍食品へのシフトが進行中。
輸入米は「安くて炊きやすい」「味にこだわらない層に合う」として、 “主食の再定義”を象徴する存在になりつつある。
今後の展望──令和8年以降の米市場はどうなる?
農水省のマンスリーレポートによれば、令和7年の米生産量は前年より40万トン増。 だが、消費量は減少し、輸入米は増加。 このままでは、国産米の価格維持は困難となり、 「高品質・高価格」vs「安価・実用性重視」の二極化が進む可能性がある。
結論:主食の未来は“選択の時代”へ
輸入米の増加は、価格だけでなく、文化・政策・心理・国際関係が絡み合う複雑な現象。 令和8年以降、私たちは「何を主食とするか」を、価格だけでなく価値観で選ぶ時代に入るのかもしれない
政策の全体像──令和の米改革、5つの柱
令和7〜8年、日本の米政策は大きな転換点を迎えている。
政府が打ち出した5つの柱は、価格調整だけでなく、農業構造を変える可能性を秘めている。

- 補助金廃止
従来の価格維持型政策からの脱却。市場原理に委ねる方向へ。 - メーカー化
流通の効率化と企業主導の供給体制。農家と企業の直接契約が進む。 - 収量契約
農家が収穫量を企業と事前に契約することで、安定供給と価格調整を両立。 - 減税見直し
関税や農業関連税制の再構築。TPP・FTAの枠組みで国際競争力を意識。 - 輸入促進
価格調整と消費者選択の多様化を目的に、輸入米の流通を後押し。
この流れは、単なる制度変更ではなく、日本の主食文化そのものを揺るがす可能性がある。

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