はじめに:鹿児島米の品種転換が本格化
鹿児島県では令和7年産から、新品種「あきの舞」が本格的に市場流通を開始。 長年親しまれてきた「郁光(イクヒカリ)」に代わる次世代の主力品種として、県農政部やJAが普及に力を入れている。 背景には、夏季の高温による品質低下や収量不安定化があり、農家・流通・消費者の三者が新たな選択肢を求めていた。
🌾「あきの舞」の品種特性と開発経緯
- 開発元:鹿児島県農業開発総合センター 平成25年から育種開始。高温登熟性・多収性・良食味を兼ね備えた品種として、約10年かけて開発された。
- 交配親:西南136号 × 関東263号 高温耐性・いもち病抵抗性・ウンカ耐性遺伝子(bph11)を持つ組み合わせから誕生。
🧬「あきの舞」の母本「なつほのか」とは? 「あきの舞」は、鹿児島県育成の高温登熟性に優れた品種「なつほのか(西南136号)」を母本として誕生したよ。 「なつほのか」は、長崎県や大分県でも広く栽培されている早生品種で、ヒノヒカリ並みの良食味と高温耐性を兼ね備えているのが特徴。 - 出穂・成熟期は「あさひの夢」並みの早生
- 千粒重・精玄米重ともに高く、収量性も良好
- 食味評価はヒノヒカリと同等で、冷めても美味しい
- ただし、いもち病にはやや弱いので防除が必要
- この「なつほのか」の優れた特性が、「あきの舞」の高品質・高収量・高温耐性につながっている
- 特性まとめ
- 高温登熟性「強」:夏場でも玄米品質が安定
- いもち病抵抗性「葉:強」「穂:中」
- 千粒重・収量性ともに「ヒノヒカリ」より高い
- 食味評価は「ヒノヒカリ」と同等
- 熟期は「ヒノヒカリ」と「あきほなみ」の間で収穫分散が可能
🍚「郁光(イクヒカリ)」との関係と世代交代
「郁光」は鹿児島県の早期栽培米として長年親しまれてきたが、近年は高温障害による品質低下が課題に。 特に県南部では「特A」評価を逃す年が続き、A’止まりとなっていた。
| 項目 | あきの舞 | 郁光(イクヒカリ) |
|---|---|---|
| 登場時期 | 令和7年本格流通 | 平成初期から普及 |
| 高温耐性 | 強い | やや弱い(近年品質低下) |
| 病害抵抗性 | 葉いもち・ウンカに強い | 普通 |
| 食味 | ヒノヒカリ並みの良食味 | 甘みとふっくら感が特徴 |
| 収量性 | 高い | 安定 |
| 普及の方向性 | 鹿児島県全域へ拡大予定 | 一部地域で継続栽培 |
「あきの舞」は、郁光の後継というより“気候変動対応型”の次世代鹿児島米として位置づけられているよ。
🏞️JAの動きと現場の声
JA北さつまでは、令和6年秋に種子生産イベントを開催。 地元園児や行政関係者も参加し、「あきの舞」の普及に向けたPRが行われた。
中津川採種生産組合・福丸組合長のコメント 「米農家にとって栽培しやすく、食味も良い期待の新品種。消費者の元に届くのはもう少し先になるが、楽しみにしていて欲しい」
鹿児島県農政部の方針
- 普通期米の主力品種「ヒノヒカリ」への依存を減らし、収穫期の分散と品質安定化を図る
- 「あきの舞」を中心に、地域ごとの気象リスクに対応した品種構成を推進
🗣️消費者の声と市場の反応
- 伊佐市の直売所では「先行予約完売」も → ふるさと納税で「伊佐産あきの舞」が人気を集めている
- 鹿児島市在住・30代主婦 「新しい品種って聞いて気になってました。子どもが白ごはん好きなので、冷めても美味しいなら嬉しい!」
- 外食業者の声 「ヒノヒカリの品質が年によってばらつくので、安定した食味の新品種はありがたい。価格次第では切り替えたい。」
まとめ:鹿児島米の未来を担う「あきの舞」
「あきの舞」は、鹿児島県の米づくりにおける気候変動対応・品質安定・収益性向上の三拍子を兼ね備えた期待の新品種。 「郁光」からの世代交代を象徴する存在として、令和7年産から本格的にその実力を発揮し始めている。
今後は、県内全域への普及・ブランド化・消費者認知の拡大が鍵となりそう。

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