新米価格、異例の早期下落──2025年産米に何が起きているのか

はじめに

「新米は高い」が常識だった米市場に、異変が起きている。2025年産米は、出荷からわずか1か月あまりで価格が下落し始めた。例年であれば年末まで高値が維持される新米が、旬のうちに値崩れを起こすのは極めて異例だ。背景には、豊作と消費減退という構造的な要因がある。本稿では、価格下落の実態とその意味を探る。

1. 新米価格、1か月で1,000円以上の下落

農林水産省の相対取引価格によると、2025年産米(60kgあたり)は9月下旬の初値で13,500円前後だったが、10月末には12,300円台まで下落。わずか1か月で1,200円もの値下がりは、過去10年でも例がない。

図1:2025年産米の月別価格推移(60kgあたり)

年月平均価格(円)
2025年9月13,500
2025年10月12,300
2025年11月12,000(推定)
2025年12月11,800(推定)

※出典:農林水産省「米の相対取引価格」速報値

例年であれば、価格は年末まで横ばいか微減にとどまるが、今年は新米の“旬”が終わる前に価格が崩れた。

2. 豊作と消費減退──需給バランスの崩壊

2025年の作況指数は「103(やや良)」と発表され、全国的に収穫量が増加。特に東北・北陸では平年比105%以上の作況となった。一方で、外食・観光需要の回復は鈍く、家庭内消費も減少傾向にある。

図2:作況指数と主食用米生産量の推移(全国)

年度作況指数主食用米生産量(万トン)
202198740
2022100750
2023101755
2024100748
2025103785

※出典:農林水産省「作況調査」「米生産量統計」

供給が増えた一方で、需要は動かず、在庫が積み上がる構図となっている。

3. なぜ新米価格は本来、下がりにくいのか

新米は、香りや食味の良さから贈答用や高級需要が見込まれ、例年は高値で推移する。特に9〜11月は「旬」として、価格が下がりにくい時期だ。しかし今年は、流通業者が在庫リスクを避けて買い控えに走り、価格形成が不安定になった。

4. 生産者の苦悩──「売り時がない」

農家にとって新米は、1年の収入を左右する重要な収穫物だ。例年であれば、出荷直後に高値で売り抜けることができたが、今年は「売り時が見つからない」という声が相次ぐ。特に中山間地の小規模農家では、保管コストや資金繰りの問題から、安値でも出荷せざるを得ない状況に追い込まれている。

5. 今後の展望──価格回復の兆しはあるか

短期的には、年末年始の贈答需要やインバウンド観光の回復が価格の下支え要因となる可能性がある。しかし、構造的な消費減退が続く限り、価格の本格的な回復は見通しにくい。政府は備蓄米の買い入れや輸出支援の強化を検討しているが、根本的な解決には「米の価値を再定義する」取り組みが求められている。

おわりに

新米の価格が“旬”のうちに崩れるという異例の事態は、単なる需給のミスマッチではなく、日本の米市場が抱える構造的な課題の表れである。今後、米の価値をどう伝え、どう消費につなげていくか──その問いに、私たちは真剣に向き合う必要がある。

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